シマシマの「走れメロス」

はじめに

太宰治さんの「走れメロス」を思い出しながら、チラチラ青空文庫を見ながらシマシマにしました。ざっくりあらすじのシマシマ訳というようなつもりです。

私は往く

 彼は憤る。
彼は妹と住み羊と暮す。彼に親は亡く妻も無い。妹は直に嫁ぐ。妹へ贈る祝い品を買う為に彼は村を出る。村を出て古い友の住む街へ行く。街に着き買い物を終え、日が暮れ今の街が昔と違う事に気が付く。街は暗く妙に静か。道を行く男に問う。男は言う「王が是も非も無く人を殺す」。
 彼は憤る。尊い命を奪う事は許し難い。彼は惨い王を消す意を決め城へ進む。
 城に着き彼は王と向き合う。王は彼を殺す気で、彼も従う。然し。其の時を待つ様に願う。妹を祝う式を終え再び王の前に来る。必ず来る。其れ迄は王に友の命を預け私は行き私は戻る。古き良き友と、人を信じ難い王に必ず戻る事を誓い、彼は村へ急ぐ。
 村に戻り妹と婿を説き伏せ急き立て式を行う。宴も半ば彼は厩で眠る。
 目が覚め飛び起き雨の降る中を彼は走る。
 私は死ぬ。死ぬ為に走る。走り続け友を救う。隣の村に入り雨は止み陽が強く差し暑い。妹の婿は良い男で妹は幸せ者だ。私が気を揉む事は無い。気を緩め少し歩く。
彼の足が竦む。目の前の川は荒れ水が溢れ行く手を阻む。彼は神に願う。荒れ狂う川を鎮め友の為に走る望み叶え賜え!
 川は躍り狂う。彼は意を決し荒れ狂う川へ身を投じ渡り切る。日が傾く。陽が沈み切る前に城に着き友を救う為に彼は急ぐ。
 彼の目の前に賊が出た。「待て。」「嫌だ。」「命を貰う。」「王の差し金か。」彼は忽ち賊を殴り倒し峠を走り去る。然し空は熱く彼の体は疲れ切り彼は動け無い。諦め声を上げ泣く。私は精も根も尽き果て友を欺く。私は笑い者だ。友よ許せ。私を待つ友よ。私は荒れ狂う川を越え賊を躱し此の地に来た。私は諦め死ぬ。友よ、君も死ぬ。彼は眠る。
 耳に水の音が入る。彼は目が覚め水を飲み悪い夢を棄て再び進む。間に合う筈だ。走れ!私は漢だ士だ!走れ!神よ!
 風の如く、人を跳ね犬を蹴り彼は行く。路を行く人は言う「例の男は既に磔だ。」走れ。私は走る。愛と誠の力を体に。進め、私は進む。彼は既に裸だ。
「間に合う訳が無い、彼の方は死ぬ、君を恨む。」彼に声を掛け走り叫ぶ男が居た。
 陽は未だ有る、間に合う、私は走る。彼は男と共に走り続け城へ行く。
 陽が沈み切る際に、目に映る磔の友の姿を見て彼は叫ぶ。
「私は来た!私を殺せ!友を救え!」
磔に昇り縄を解き、彼は友を救い出す。彼は言う。
「友よ私を殴れ。頬を殴れ。私は君の死を見た。殴れ。」
 友は言う。
「友よ私を殴れ。頬を殴れ。私は君を疑い見た。殴れ。」
彼と友は殴り合い抱き合い、声を上げ嬉し泣く。
 王は言う。
「お前ら共に、私の疑う心に勝ち、私は真を見た。」
 民は叫ぶ。
「王よ!我が王よ!」
 娘が緋の布を彼に捧ぐ。困る彼に友は言う。
「友よ、君は素っ裸だ。其の布で体を覆え。其の娘は君の裸を皆に晒す事が嫌な様だ。」
 彼の顔は真っ赤だ。

読み

  • 直に嫁ぐ→ジキニ嫁ぐ
  • 妹へ贈る祝い品→妹へ贈るイワイヒン
  • 惨い王→ムゴイ王
  • 然し→シカシ
  • 厩で眠る→ウマヤで眠る
  • 足が竦む→足がスクム
  • 賊が出た→ゾクが出た
  • 忽ち賊を殴り倒し→タチマチ賊を殴り倒し
  • 友を欺く→友をアザムク
  • 賊を躱し→賊をカワシ
  • 既に磔だ→既にハリツケだ
  • 彼の方は死ぬ→カノカタは死ぬ

おわりに

はじめに書いたとおり、シマシマでだいたいのあらすじを書いたつもりです。太宰治さんや治さんの身近な人々を不快にさせようというような気持ちはありません。

シマシマというのは漢字とかなが交互になる単語や文のことで、これを読むたいがいのときにつっかえてしまって難儀していて、それがある文章のその部分を見つけることがとても多く、勝手にシマシマと呼んで読んでいます。
マルとカギカッコのルールはよくわからないので、青空文庫にある「 走れメロス」をマネしました。