わたしはずっとこどもだけどすっかりおとなであるんだとわかった

親にくっついて病院に行くと、ときどき同級生やきょうだいの同級生の元保護者(当時は現保護者)の人々と再会することがあり、ぜんぜん変わらんねまだ結婚してないんやろ所帯のにおいないもんお父さんつれてきたん?えらいね親を大切にしなさいよ。などなど言われます。自身の子じゃなくても、いつまでたってもこどもはこども。冷えたら関節がいたいとかケータイの画面に焦点が合わないとか言ってもぜんぜん、まだまだ!若い若い!ということです。


雨がふっている寒い夜、女性が道に迷っていまして、わたしはそのとき自分のできることをしました。なんどもすいませんと言われまして、もしかしたら彼女は泣いていたかもしれず、それは雨だったかもしれず。大丈夫がんばってとわたしはその女の子に言って、そして背をぽんぽんと叩いた。だれかのからだにいとも簡単になにげない風に触れた自分自身にとてもおどろいて、その夜は考えこんでしまいよく眠れず、いったいこれはどうしたことかと翌日もずるずると引きずっていましたところ、玄関で来客の音がした。昨夜の女性が立っていて、礼にきたと言う。昨夜は遅い時間だったけど仕事だったこと、イレギュラーな案件だったこと、困っていたこと、などコンパクトに説明してくれて、頭をさげてかわいらしい包みをわたしにくれた。なにこのできごとかわいすぎる!若いのに働いてるとかめっちゃ立派!問題解決したとかこの子チヨウえらい!若い女の子からお礼とかどういうこと?電車男まんが日本昔話?とか思いながらも、少しでもお役にたてたのならうんたらかんたらとか、ごていねいにありがとうとか、えんりょなくどうこうとか、わたしはハリボテのおとなをまあまあ上手にやった。そして、パッとなにか理解があったようなハッとした気分になり、部分だか場所だか場面だかどういうなにかはわからないけど、わたしはすっかりおとなであるんだとわかった。


おむつを交換するとか、これは食べてはいけないと注意するとか、病院につきそうとか、医師や薬剤師の人のはなしをかわりにきくとか、クツの左右がちがうよと教えるとか、転んでいるのを起こすとか、光回線のセールスの人におかえりいただくとか、両親や身近なおとながわたしにしてくれたことを、いまはわたしがだれかにしていて、両親や近隣におすまいのみなさんはありがとうと言いつつ、やっぱりこどもあつかいです。ないしょで500円くれたりします。


だれかのからだにことわりなく触れることについては、今後気をつける。