放置プレイ開始。


「トリの死がい」

カメラを持っている人の指先に血がみえて、親指のツメの付け根に出血があって、ほんの短いあいだ目が釘付けになった。そのむこうに「どうしたの?」というような表情があるのに気がついて、サムネイルとわたしは言った。知ってる単語。
肌も瞳も頭髪も明るいとかうすいとかそういう色で、出血したのはたぶんおそらく「いわゆる白人」の人で、そのことは知っていたはずなのに、生きている白人の血液が赤いという現実が目の前60センチくらいにあったのははじめてのことで、わからないけどたぶんおどろいたのだと思う。なん年も経つけどときどき思い出してはそのことが気になることが気になる。


車道に放置されていたこわれた傘を回収しようとしたのにそれはどうやらカラスの死体で、歩道からは黒にみえたけど見おろすと半分くらいは赤で内側の部分がどれだけか外に出たようすで、コワいしキモいし素手では絶対イヤだったので道具を使ってカラスのほとんどを回収した。
相談した行政の担当の人の指示どおりに赤黒いカラスを袋に入れたが一部がチリトリにペットリはりつてとれず、しかたなく指でつまんでペロンとはがしたところ、しっている感触があった。モタリと。薄目でじっくりみるとそれはトリのレバーにそっくりで、袋の中を薄目でしっかりみるとそれはどうみてもトリ肉だった。カラスはトリだった。トリの死がいと袋に書いて指示された場所に置いた。


この数日、外に出ると生きているカラスに見張られているようすで、つけられているようすで、うたがわれてるのだと思う。
わたしはカラスを殺していないし、白人を食べようとしてない。差別はしてるかもしれない。
黒くて太い毛が洗面台にあるとそうでない毛があるときよりより不快だと言われたことを思い出した。
チリトリの茶色い血痕とグレーのホヨホヨした羽毛は水で流した。さわりたくなかった。