父の冒険未遂 2

夜中。気がついたときには玄関扉が十数センチ開いていた。

「間に合う」と確信するような気持ちになり、外にとびだして父の姿をさがした。夜中とはいえ、おとなの人が勝手に出かけることについて、干渉しすぎるのはよくないと思うし、自分がやいやい言われすぎたらブチギレルかもしれませんが、父は足腰ヨワヨワのボケ老人風なくらしの人なので、ひとりでひとりでに出かけるとなると、車にひかれてぺっちゃんこになったりしてるのではないかとかいろいろ不安になる。
外に出てから「いやいや、寝室とか確認したりとか、家族に報告するのが先じゃね?」と思い、ひきかえしましたところ、

ろうかに光がもれていた。

父のくらしには、個室を仕切る扉などはなく、すべて布製のカーテンで雰囲気を仕切っている。トイレのカーテンの下から父のあしが見えた。「良かった。徘徊している父はいなかったんだ」


じゃねーよ。玄関あけっぱなしとかどういうこと?誰?どこのクソのしわざ?と、ひとりごとをギンギンにブツブツ言ったりしたけど、合鍵を持ってるきょうだいのしわざということはわかってた。こちらもあちらの合鍵を持っているので、きょうだいの家に行き解錠しキッチンにむかう。殺虫剤と包丁を手にしきょうだいの寝室へ。眠っている人間の顔に殺虫剤をかけ人間を刺殺した。さきほど警察に電話して自首したので、これから出頭します。
後半ウソで、はじめのほうもいくつかウソです。
冒険でも未遂でもなんでもないはなし。