ただいまというなり。でむかえた母と姪がこちらにむかってしゃべりだした。耳だか脳だかの機能がおとっているのかなんなのか。人の声がぜんぶきこえてききとれることがときどきあり、そのときそれになった。ただいまと言いはじめたときのポーズでかたまったまま、あーとかえーとかいいつつつっかえつつ。ちょっと待ってね。とやっとふたりにいった。

世界の人口が50億人くらいだったころ。友人の父親が「でむかえてくれるのはおまえだけや」と犬にいっている姿をみたことがある。犬は。おじさんを家に入れたくないのでは?と思うくらいに跳ねたり回転したりファガファガハアハアがりがりしたりざっざっしたりとほたえていた。じゃれるとかあばれるとかそんな意味。顔面にぶちあたる鼻先。人間の顔面。犬の鼻先。

上がり框には片足だけで。もう片方は土間にあるまま靴はいたまま。人と犬は似てるのか。人と犬は仲良くくらしていけるんだろうなと思って、最後(最期)まで責任を持って飼いましょうと思って、あとなんか思ったけど忘れた。