なにを考えてかくのだろう

ハルビン氷祭り」というイベントが中断された年。テレビから「客足が途絶えた会場は雪と氷に閉ざされて時が止まったような光景が広がり」と聞こえてきた。家人は。それはおかしいと言った。

おそらくたぶん、ハルビン氷祭りはそもそもまいどまいど雪と氷に閉ざされておるのであろうから、「時が止まったよう」な印象をもたらしているのは、そのニュースの文句の通りイベントが中断されたからだ。そしてその原因は感染症の世界的大流行だ。「雪と氷に閉ざされて時が止まったよう」なのではなく、「客足が途絶えて時が止まったよう」なのではないかと言うのです。なるほどそうかもしれない。

思ってもないことを言う人がいる。原稿をよみあげるつとめがある人の中には思ってもないことをただ読み上げなければならない場合があるのでしょう。

 

小説だかなんだか。物語。男ふたりが飲み屋を出ようとして会計時に、上着の内ポケットだか胸ポケットだかから財布を出したとき。家人は。おかしいと感じたと言う。

男らは職につかず(つけず)景気はすこぶる悪く。おごると言ったが数千円の飲み代全額の持ち合わせなく。悪いが少し割前をというような状況で、財布を入れるポケットがそんなところにあるような上着なんか着ていない。現実にはいたとしても物語の人はそんな服は着ないでほしいと言うのです。なるほどたしかに。ことによっては財布すらなくてもかまわない。

原稿をかく人は、