父の介護とか、わたしへの子育てとか 2

1週間に2回か3回、両親のすまいの掃除をする。
床に輪ゴムが落ちていたとしたらずっと落ち続けていて、それはだれも拾わないからで、なぜ拾わないのかしばらく前にたずねたとき、輪ゴムが見えないと母は言った。茶系の床にオーバンドは見えないし、たとえばかつお節パックみたいな透明のものとか、くすりのアルミシートのように反射するものとか、破片なら見えない。
クイックロックが落ちてて、茶系の床にブルーで、透明感もキラキラ感もなく。レシートが落ちてて、ラテックスグローブが落ちてて、せんたくばさみが落ちてて、DSi LL が落ちてた。DSi LL は茶系だけど、見えていないわけではなく。腰とかひざとか肩とかいろいろ痛くて拾えないと母は言った。
トイレに使用済みのトイレットペーパーが落ちてて、マスクが落ちてて、マットや壁に人糞が付着している。トイレにはドアもスリッパもなく、たぶん家中に大腸菌が落ちてる。
2ヶ月か3ヶ月に1回くらい、父の排泄物を踏む。
床から70cmくらいの高さにある洗面台に足をつっこんで指の間を洗うのだけど、たぶん。わたしは10年後にはここまであしが上がらない。家族は10年前にここで顔を洗ったり歯をみがいたりしていた。


子のでも親のでも、親族のでも他人のでも、自分のでも。排泄とか排泄物の処理とか、めんどうだろうしくさいだろうしめんどうくさいだろうと思う。おとなのおむつとこどものおむつをくらべてもなにもない。きょうだいのおむつと他人のおむつをくらべてもなにもない。自分のおむつも。めんどうだしくさいしめんどうくさい。たぶんただそれだけで、なんたらかんたらと言うことも聞くこともない。喜怒哀楽もない。
ハンドクリームをぬる。ちょっと高いのとかかなり高いのとか。なんか有名なやつとか。ロクシタンとかのとか手に入れる。いまはハーバシン。