ままごとではイヌ役でワンワンいうだけだった

「55イチジク」と「まるごと果実ブルーベリー」など。ジャムの空き容器がいくつか、「つぶらなカボス」「L'espoir」「はごろも煮」の空き容器などとおなじペールに入っていた。ジャムが入っていたビンのふたをはずして紙のラベルをはがして。見つからないようにガチャガチャ音をならさないように注意していたつもりだったが、母がそばにきて「ふたはあかんの!?」とおどろいたように言った。この金属製のふたは空いたガラスビンといっしょに資源として排出できないのかという意味で、母がわたしにこの旨を問うのは17回目くらいで、これまで。シリアスにコミカルにていねいにぞんざいにやさしくきつく。いろいろな言い方で回答してきた。この日は、大きく息をすってから、もう。と大きく息を吐き、つかれた。と吐ききっただけだった。母は「そうやったな」と、まるで被害者のような顔で、わたしを見おろしていた。

この一週間くらい。年末年始ということもあってか、関西とか大阪という地域性なのか。テレビ番組にひっきりなしに漫才師が出演して漫才をしているようすだった。一方(いっぽう・ひとかた)の発言にもう一方が過剰に反応するということが多く。一方がなんやかんやと持ちかけ、もう一方を驚嘆させたり落胆させたり。おそらく。ぜったい。なんどもケイコ(稽古)をしているであろうから、まるではじめての体験のようなアクションやリアクションは演技とか芝居とかなのだろうと思う。

「ふたはあかんの!?」と母はまるではじめて知ったみたいな、はじめて言ったみたいなアクションだった。病床の父の手をにぎり「もういっぺんいなかに連れていってあげたかった」と母が言ったことがあった。演技とか芝居とかなのか、ウソなのかよくわからない。「なぁ?」と問われたので、なんで?とか、べつに。とか応えたと思う。つきあいたくない。人前で演技とか芝居とか、できればしたくない。こんなウソを母につく必要はない。