ESKESEN ボディハーネス

わたしの秘かなコレクション。デンマークペン(ポルノ限定)。

ボディハーネス。
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父が退院した。
認知症の人々とのくらしのなかで、「祖母に忘れられてしまった」とか「父にはもう僕がわからない」ということを知ったりわかったりするできごとがあるようすで、物語やエッセイのなかで多くの人が体験している。わたしはまだで、体験してるのはわたしが父をわからなくなるということ。

ベッドに腰掛けた裏ももや、手すりを握ったてのひらに、イヤな感触があるとそれはたいがい人間の糞尿で、なにこれ?どういうこと?と言いたくなるけど声にならず。たしかめると紙製のパッドやパンツがちぎられていて、こいつがやったん?こいつだれなん?その「こいつ」が、あごでクイッと指示したり手をシッシとはらったりする。これなんなん?なんなんこれ?これはいったいなんなん?とつぎつぎに言いたくなるのにまったく声がでず、その「これ」を移動させていろいろ始末し、おおげさだけど1万回手を洗う。「これ」を元の位置に移動させた手に、とくに指先に、人間の皮脂がべっとりとついている。100万回手を洗う。乾燥してる皮膚のしたに脂があることにむかつく。どうなってるねん。ふだん出ろよ。ベッドの上ではボケ老人みたいな顔をしてる父がいて、殺すぞと言いたい。言わないし殺さない。
まあ、ひとつきに数回くらいのことなのでどうでもいいや。