父兄は死人だ

父のきょうだいのひとりが。

父のきょうだいの遺産の相続手続きをすると言ってくれまして、自分が生きてるうちにやらねば相当にめんどうなことになるとのことでひとはだぬいでくれたのですが、たったひとつの空き家をたったひとりが相続するというシンプルなものなのにすでにたいへんめんどうだということです。

養子縁組とか逆縁とかなんとかかんとかで数年かけて相続人は父のきょうだいであるとわかったときには、父のきょうだいは老人と死人だけになっており、老人と死人のなかには配偶者や子がいる者もいない者あり、死んだ者のなかには自身より子が先に死んだ者もあり、死んだ子に子がいるという者もある。こんなことはよくあるはなしで、だれかががんばらないといけないのは昔からそうです。国民みたいな市民みたいな個人ががんばらないといけないのです。これからもそうですか。

今やるのがベストなのかもしれない。数年前なら施設や病院でくらす老人が数人いましたし、子孫がなんだかはっきりしない者がひとりいますが、まだ会話もできるし文字もかける老人としてギリ生きています。おばのひとりが「おれがやる」と言ってくれたことが本当にありがたい。

 

それにひきかえ。です。ですか?

マイナンバーカードとか戸籍課とか。なんもできない。なんの能力も持たせてもらってなくて。誰に?たぶん政府とかそんな感じのやつ?しらんけど。

戸籍全部事項証明書(いわゆる「戸籍謄本」らしいです。そうならそう言えと思いますしそうでもそう言うなとも思います)。親子とかきょうだいとかなんか似たようなほぼ同じみたいなのを何通も紙で。ペーパーで。提出するらしいです。死人の改製原戸籍謄本(「いわゆるハラコセキです」しらんしらん。改製原戸籍謄本ってそっちが言っててこっちも言ってたら改製原戸籍謄本でいきましょうよと思います)が必要なようですけど、それは出生届を出した土地の役所に申請する必要があるとかで、郵送可とのことですけど手数料とか送料とかなんか忘れたけど定額小為替?でお願いとのことなのでなぜか郵便局。これはキャッシュレス決済ということかな。区役所行って市役所行って郵便局行って、わたしの書類は「マイナンバーカードあるならコンビニのほうが50円安いけど?」あいかわらずの親しげな口調はここの職員の一部の人の特徴です。いやいやちょっと待って、改製原戸籍謄本って両親が同じきょうだいだったらとれるのではないですか?「とれます」ズコー。父のは父のきょうだいにとってもらいまして、わたしは兄のをとればよいのです。兄の出生届を受理した土地の役所に行けばよいです。1日で行って帰ってこられる距離。印鑑ときょうだいとわかる書類がいります。戸籍謄本とか。さっきとりました。本人確認書類お持ちですか。わたしいがいわたしじゃないのーだ・か・らマイナンバーカード(ポーズ)。なつい。あした父と兄の住民票の除票をとって……。あれ除籍謄本じゃなかったか?除籍謄本なんてこの世にある?この日本語通じる?除籍全部事項証明書。ああそれかも。いわゆる除籍謄本です。言うと思った!あれ?相続と役所は関係ないのでは?いらいらしてすいません。個人の事情でした。

 

あのちいさい平屋。相続して。おば。処分してもしなくてもたぶん赤字になりますので、なんか大きな力にうばわれたいと関係者のほとんどが思ってるのにそうならない。

 

父兄は死んだと世界中の人々に言ってまわりたい。兄が死んでまいにち。わたし以外みなとてもつらそうだった。突然死んではいけない。兄が死んで父が死んで「お父さんはまあ仕方ないけど」とのことなのだけど、兄も父もまあ仕方ないのだけど、実はわたしはだいたいまいにち苦しい気持ちで、人々に父兄が死んだと言ってまわりたい。言ってもなにもない。おとうさんたすけて。むかえにきて。おにいちゃんでも可。たすけて。しかしまだ死なないと決めているし、自分では死なないと決めてる。突然死しないようにできることはしようと思っている。世界中の人々にわたしはまだ死なないと言ってまわりたい。そんなん疲れる。