ごんぎつね

まるでおじいさんみたいな人物の頭がみえて、どうやら自転車にのっている様子に思えた。たとえばキキョウをみたときキキョウだと思うのだが、なぜわたしがキキョウをキキョウと思ったのかわからない。まだ幼かった姪らが、Eテレいないいないばあっ!」のワンワンをイヌだと言い、近隣でくらすポメラニアンをイヌだと言い、別のお宅でくらすミックス犬のこともイヌだと言っていたことがとても不思議だった。とてもちがっているのにすべてイヌだと思っているのが不思議だった。

 

おじいさんが飛び出してきそうな予感がしたので気が早いかもしれないと思いつつもブレーキをかけて道路のはじで停止した。わたしは自転車に乗っていました。一時停止ラインから飛び出したところでおじいさんは急ブレーキをかけ、自身からか自転車からかわからないが手袋を落っことした。おじいさんはギロとこちらに目線をよこし「ややこしいことしやがって」と大きな声を出し「クソが!」と、より大きな声を出し体勢をととのえこちらをにらみ「クソが!」と、より大きな声を出し体勢をととのえこちらをにらんだ。2回目の「クソが!」を聞きとってから、まてこらクソてどういうことやねんこっち関係ないやろがおまえが勝手にややこしなってんやろがと申しあげたところ、おじいさんはよりいっそう体勢をととのえ走りさろうとしましたのであわてて。相手選んで言ってるやろがだれにでもおなじように言うんかとおじいさんの背中に大きな声で申しあげました。

しかし。相手を選んで言ってるのはわたしでして、だれにでもおなじようには言わないのです。ああ、わたしだったのか。