父の30年、30年前のわたし

1983年で4月24日でたぶん日曜日でおそらく午前9時とか10時に起きた。両親はいなくて寝室は布団があげてあって、花ござを敷いた部屋はあきらかに変で異様に思えるほど片付いてて、自分のまわりの空気について空気を感じたのは人生で3回くらいあり、そのはじめの1回で、ありきたりだけどそれは澄んでた。
カーテンは開いていた。しばらく長い間だれもいなかったような奇妙な感じのする空間で、昨日の夕飯はここで食べたのだけど、ひょっとしたらそもそもだれもいなかったかのようなとにかく変な空間。きょうだいが起きてくるまでずっと変な感じで、でも、柱をつかんでぼんやり立ってる自分の姿を思い出せるので自分がつくった記憶がまざってる。
きょうだいがぽつぽつ起きてきて、同じことをたずねてきて、だれのどの問いにもわたしのこたえは1種類で、ゆうべは1番最初に布団に入ってさっき起きたばっかりでわからない。昼過ぎにわかったことは、ゆうべ両親の布団は敷かれず、カーテンは閉められなかったということ。父がケガをしたこと。両親は病院にいること。食事の世話などをどなたかがしてくれ、そのときにわかったんだろうけど、その人がだれだったのか思い出せません。女性だった。
母とは数日後、父とは数週間後に再会したらしいけど記憶がちがう。学校をはじめてずる休みした日で、母がめっちゃおこって自転車でどんどん行ってしまうのでそれに必死でついて行った病院で、父は頭に白い手ぬぐいみたいなのを巻いていて、ベッドのくるくるのあたりに茶色の液体が入ったパック(バッグ?)がさがっていた。同室のおじいさんにつきそっている女性が小さな洗面台の前でちりちりの髪の毛を黒く染めていた。
学校に行かなくなった。ランドセルを解体して捨てた。弱みにつけこまれた。人がイヤがることをした。あとにひけなくなった。認知したチカンにあった。いじわるをされた。いじわるをした。同情した。動物を殺した。セックスを知った(してない)。腕を切った。カツカレーのカツをのこした。階段で(に?から?助詞がわからない)つきおとされた。制服のボタンをひきちぎられた。色っぽいと言われた。太ももにコンパスをさした。頭髪を脱色した。変装した。エロ本を買いに行った。ペニスをみせられた。クイズを出された。大便をみせられた。はさみでヒフを剥いだ。病院に和服の女性がきた。母が追い返した。父のきょうだいがきた。風呂釜をこわした。羽蟻にやられた。おばさんと銭湯にいった。お寿司屋さんに行った。おばさんの布団で寝た。包丁をつきつけられた。イヌがいなくなった。近隣の夫妻がイヌを散歩に連れて行ってくれてた。ファンタアップルをもらった。腹をこわした。うどんをつくってくれた。みかんをもらった。タルトをもらった。ポエムをもらった。裁縫をおしえてもらった。病院で車いすにのりまくった。病人のフリをした。積み木みたいなのをした。母の姉が泣いていた。首をしめられた。首を吊った。直接かかわってきたおとなはいつも絶対に女性だった。両親が帰ってきた。
父は別人のようになっていたと思うのだけど、そうなる前をもうおぼえていないし、母の正しいことは150度くらい変化した。きょうだいは父と接触しなくなり、それは最近、緩和された。わたしはそろそろ閉経するような年齢で、そのとき初潮はまだだった。
30年を一区切りとか一世代とかととらえるような感じはあるようで、きょうは2014年で4月25日で、たぶんちょうど30年経った。1年か1日か1年と1日まちがえてるかもしれないけどまあいいや。
父の意識が戻ってすぐ、母が病院の近所の商店で買ったコーヒーカップがつい最近まで食器棚にあった。本日は両親宅のそうじをする日だったので物色したのだけど見つからずだったので、もう捨てたんかな。